糸井重里とNHKは、吉本隆明を晒しモノにするのはやめろ!

 先の土曜日(2010/03/13)、NHK-ETV特集とかで、衝撃的映像の再放映があった。最初は二年前の正月だったか、吉本隆明昭和女子大人見記念講堂で講演した番組である。衝撃的というのは、あの吉本隆明の老醜無惨ともいうべき姿である。姿というのは、足が弱ったそのような姿をいうのではない。しかし、なにかしら、そのような姿を敢えて撮し、糸井の庇護をうけてさえみえるのも、辛いものであった。かつて、吉本が、花田清輝に「芸人山門に入るを許さず」とかいう文を叩き付けていたことがあったのをみたことがある。今、吉本が芸人か、いや糸井が猿回し芸人で、吉本が踊っているかの様子さえ窺える始末であった。尤も、この講演は、吉本が喋りたいと糸井に言ったのを、糸井がプロデュースしたということではあった。
 このときの惨状は、かつて吉本の盟友とも言い得た神津陽が初回の放映を観たあと、時間感覚を無くしてしまった吉本の深刻な現状を書いている。
 吉本の話は、自然的宇宙への同化に辿り着く。無!に結着する、禅に嵌った西田哲学や晩年の梯明秀も思い出す。とくとくと、自然との一体感を説いているかのようであった。 越前の山中で語られることが、東京で話されているようであった。
 不意に、自同律の不快について述べていた、晩年の毅然とした埴谷雄高の姿が、かつて同様のテレビ映像で流れていたことを思い出した。あのときの埴谷は、ほとんど90歳、今の映像の吉本より、はるか年上だった。