よく売れている『もし、高校野球部女子マネージャーが、ドラッカー「マネジメント」を読んだら』(ダイヤモンド社)のダメな理由

 この本は、確か、毎日新聞の書評で取り上げていたように思うけれども、簡単に、ダメな理由を掲げてみましよう。

 高校野球も野球も知らないものが書いているようで、しらけます。よく売れているのは、野球も高校野球も知らない人が買ったり読んだりしているからでしょうか。野球漫画だと、こんな馬鹿なことは書けません。夏の地方大会が始まっています。一度勝つことのしんどさ、というより、この本にも出て来ますが、九回やること(つまり、相当の高校が、コールドで負けています。)のしんどさを分からないと。作者は何という名前だったか、軟式のゴムボールと、硬式のボールの重さの実感もないのじゃないかと思います。小学生の女の子がダミーの空振りをするのは、漫画風ですけど。小学生の女の子が、どんなスイングできるのでしょうか。
 亀田兄弟みたいなトレーニング(柔道や陸上競技のことですが、亀田兄弟自身、あれはショーだと恥ずかしがっているのではないですか。)もしらける。よく本にすると思いますね。実際に、野球部レギュラーの体力、運動能力は人並み外れているのは、よく見かけることです。他の運動をやらしても凄いのがいます。柔道やっているから、腰が強いのではないので、強いから、そして、運動神経がよいから柔道も強いのです。ただ、けがをしたりするので、いらざることはしてはいけません。
 そんなことに気がつかない東大出身の先生がいることも、想像できません。つまり、東大には、それほど、(絶対でもないですが、かなりの率で)アホは少ないと思います。歌謡曲作詞家秋元康家元の感動流が、看板のようですが、感動前にしらけていたら、感動に水をさすことになります。

 秋元康家元流の感動はいまいちで、「ドラッカー」という武器を得た、というより、むしろ商品は、ドラッカーなのですが、この商品も結構酷いものですね。
 『マネジメント』の訳が、バイブルのように出て来るのが、この本のミソなのでしょうが、そこで、アルキメデスが出てきて、彼が自分が「立脚点」を得たら、世界を持ち上げてみせる……とありましたね。それは、立脚点ではなくて、「支点」だろう、変だな、なんとか言う訳者の誤訳だろうと思いました。見てみると、原文は、確かに、"Give me a place to stand on, and I can lift the universe off its hinges," The place to stand on is the area of concentration. ……とありました。アルキメデスが、言ったのは、梃子の話ですから、「立脚点」a place to stand on だと変で、それはfulcrum「支点」の話だというのは、小学生でも知っているでしょう。だから、持ち上げるのも、the universeではなくてthe globeじゃないと、梃子の話としては、うまくいかないのではないでしょうか。だから、支点だとすると、「集中のエリア」というのが、いよいよ何のことか分かりません。

 最初に、「定義」なんて出て来ます。小泉某の息子が、岡田外相に「5月決着の『定義』は、なんですか」と質問していました。読んでみたい文学とかなんとかで売れた、半学者の斎藤某とか、三雲某というアナウンサーが、「定義」とは何ですか、というのを素晴らしいと、アホなことを言っていましたけど、これはあきらかに小泉の息子の「定義」の誤用ですね。
 たいしたことではありませんが、このような、杜撰な叙述があるのが、バイブルのように出回っているというのもどうかと思いますね。
 ひどいのは、政治の世界だけではないのですね。