追悼 スーちゃん(田中好子さん)

 2011年4月21日夜、何の番組か忘れた。元キャンディーズのスーちゃん、田中好子が亡くなったという臨時ニュースのテロップが出た。病気だったことは、キャンディーズの仲間などは、見舞いにも行ったことがあるくらいなので、知っていただろうが、普通のファンなどほとんどの人が知らず、女優として、また、コマーシャルにも登場していたのを見かけているだけに、本当に驚いた。しかし、驚いたのは、元キャンディーズのスーちゃんに思い入れがあるというのではなく、現役の女優田中好子が、本当に居なくなるという現実にうける衝撃である。
 キャンディーズ時代のスーちゃんは、アイドルにしては、ふっくらしていて、ちょっと異色な感じもしていたのは、その手の番組はあまりみなかった私も覚えている。3人の個性も、ふつうに判っていた。それほど印象的なキャンディーズだった。
 しかし、今村昌平に、映画『黒い雨』のヒロイン高丸矢須子役に抜擢された田中好子は、2次被爆した広島の悲しいが、しかし美しい女性をよく表現していた。監督今村昌平は、田中好子を起用することをいつ、どのようにして考えたのだろうか。脚本の石堂淑郎は、田中好子を念頭にして書いていたのだろうか。今にして思えば、スタッフもキャストも凄いメンバーである。
 田中好子は、東京生まれで、東京育ちなのだが、一時、関西出身の人のように思ってしまったことがある。阪神大震災の実話を扱った『ありがとう』や、やはり、関西を舞台とするテレビ・ドラマに出演している田中好子をみていたからだろう。そういえば、沖縄を舞台にした『ちゅらさん』の母親役が好評だったように、その土地の気を自分に満たしてしまう人だったのかもしれない。
 田中好子を偲んでみたくなるその気持ちは、本当のところは、とても言えない。とりあえずのところを言っているのに過ぎない。
 しかし、そのよく言われることでも、「最近は、優しい母親役に……」という言い方は、どうだろう。確かに「優しい母親役」は、女性の一つの典型ではあるだろうが、私がみたドラマでは、女優田中好子は、既婚の成人女性の魅力あふれた存在の役をやっていた。喪失感でいっぱいである。